顕微鏡的腸炎

顕微鏡的腸炎

顕微鏡的大腸炎とは?

顕微鏡的大腸炎とは?

顕微鏡的大腸炎は、長期にわたって水っぽい下痢(水下痢)が続く病気です。大腸カメラ検査では粘膜に異常は見られないものの、病理検査(採取した組織を顕微鏡で観察する検査)を行うと特徴的な炎症の所見が認められるため、この名前がつけられました。

下痢を主症状とする消化器疾患は他にも複数存在するため、それらとの鑑別が重要です。原因不明の慢性下痢が続く、治療を受けても改善しない場合には、一度当院へご相談ください。

顕微鏡的大腸炎の症状

主な症状

慢性的な水下痢が主な症状で、1日に3回以上、多い時には10回以上の下痢が起こることもあります。便には血液や粘液は混じらず、水のようなものから軟らかいものまで様々です。

また、下痢は日中に多いのが特徴で、夜間に起こることはあまりありません。

その他の症状

腹痛、全身倦怠感、体重減少、脱水などを伴うことがあります。また、重症例では栄養不良や不整脈(電解質バランスの乱れによるもの)なども見られます。

顕微鏡的大腸炎の原因

顕微鏡的大腸炎は比較的新しい概念の病気で、現時点では資料が少なく、具体的な原因は不明です。50歳以上の女性に多い、薬剤(非ステロイド性消炎鎮痛薬:NSAIDs)の影響を受ける、免疫異常と関係がある、などがこれまでの研究で指摘されていますが、具体的な因果関係はわかっていません。

顕微鏡的大腸炎の検査と診断

大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)

大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)

肛門から内視鏡を挿入して大腸の内部を直接観察します。顕微鏡的大腸炎の大腸粘膜は正常、または軽度の発赤のみで、明らかな潰瘍やびらんは認められません。生検を行って初めて炎症が確認されます。

一見正常に見える大腸の粘膜からも的確に組織を採取し、顕微鏡的腸炎の診断に必要な生検による評価を行う必要があります。

顕微鏡的大腸炎と過敏性腸症候群の違い

顕微鏡的腸炎と過敏性腸症候群(IBS)は、どちらも慢性的な腸の症状が続く病気です。「消化管に器質的な異常がなくても症状が起こる」という点は過敏性腸症候群と共通しますが、顕微鏡的大腸炎では病理検査時に異常が見られるのが大きな違いです。

それぞれで治療のアプローチが異なりますので、過敏性腸症候群として治療を受けても一向に改善しない場合には、顕微鏡的腸炎も疑われます。専門医による正確な鑑別が必要ですので、この場合には神戸市東灘区・摂津本山にある賀来医院へお気軽にご相談ください

顕微鏡的大腸炎の治療

顕微鏡的腸炎の治療は、お薬の影響によるものかどうかで大きく治療方針が変わります。まずは、現在服用されているお薬が症状の原因となっている可能性がないかを詳しく検討します。

原因薬剤の中止

薬剤性が疑われる場合は、可能な限り原因薬剤の中止または変更を行います。これだけで症状が改善することもあります。

生活習慣の改善、対症療法

お薬が原因でない場合は段階的に治療を進めます。まずアルコール、カフェイン、乳製品を控える生活改善から始めます。次に腸内環境を整えるプロバイオティクス、下痢が強い場合は下痢止めのお薬を使用します。これらにより水様下痢を改善し、日常生活への影響を軽減します。

より専門的な治療が必要な場合

上記の治療で改善しない場合は、炎症を抑える強いお薬を使用します。特にブデソニドという経口ステロイドは副作用が少なく、顕微鏡的腸炎治療の第一選択となります(※)。重篤な場合は点滴による栄養管理や手術が必要なこともありますが、多くの患者様は適切な内科治療で症状をコントロールできます。

(※)薬剤の有効性については十分な研究結果がまだ不足しているため、使用する際は専門医による慎重な判断が必要です

tel.078-411-4168