ピロリ菌とは?

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は、胃の粘膜に生息する細菌です。胃の強い酸性環境でも生き抜く特殊な能力を持っているのが特徴で、胃炎(慢性胃炎)、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となるほか、胃がんの発症リスクを高めることが明らかになっています。
日本人の場合、特に50歳以上の方では約半数がピロリ菌に感染していると言われています。若年層での感染率は低下しているものの、感染者との食器の共用や口移しによる感染例(特に幼少期に多い)が未だに見られます。
一度感染したピロリ菌は、治療を行わない限り自然に排除されることはほとんどありません。長年にわたり胃の中に住み続けますので、早期の治療が重要です。
なぜピロリ菌検査・除菌が必要か
ピロリ菌に感染した胃は慢性的な炎症を起こします。ピロリ菌感染および慢性胃炎による症状はほとんどありませんが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器疾患の原因となるだけでなく、将来的な胃がんの発症リスクを高めることがわかっています。
ピロリ菌感染による症状
ピロリ菌感染や慢性胃炎による症状はほとんどありませんが、これらによって胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん(進行がん)が起こることで以下のような症状が現れます。明確な症状がなくても、お腹の不調が続いている場合には一度検査をお勧めします。
- 胃もたれ
- 胸やけ
- 腹痛(みぞおちの痛み)
- 早期膨満感(すぐお腹いっぱいになる)
- 食欲不振
- 吐き気
- むかつき
- ゲップが増える など
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査には以下の方法があります。検査は「感染の診断時」と「治療効果の確認時」にそれぞれ実施するため、状況に応じて使い分けます。
内視鏡を使った検査
迅速ウレアーゼ試験(RUT)
胃カメラ検査時に胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の反応をみる検査です。
鏡検法
胃粘膜組織を採取し、特殊な薬剤で染色して探す方法です。
培養法
胃粘膜組織を採取した菌を培養する方法です。高い精度が特徴ですが、結果が出るまで数日かかります。
内視鏡を使わない検査
尿素呼気試験
特殊な薬を飲んだ後、呼気に含まれる二酸化炭素の量を調べます。精度が高く、体への負担も少ないため、除菌後の判定にも適しています。
ピロリ菌抗体法
血液や尿中のピロリ菌に対する抗体を測定します。手軽ですが、除菌後も抗体が残るため、除菌判定には適しません。
便中抗原測定
便の中のピロリ菌の抗原を検出する方法です。手軽に実施でき、除菌判定にも使用できます。
ピロリ菌除菌治療の流れ

ピロリ菌の標準的な治療法は、胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗生物質を組み合わせた薬物療法(3剤併用療法)です。朝晩2回の服用を7日間続け、その後4週間ほど空けてから再度検査を行います(1次除菌)。
1次除菌で約8割の方が除菌に成功しますが、失敗した場合は抗生物質の種類を変更して再度除菌を行います(2次除菌)。2次除菌まで行うことでほとんどの方が除菌に成功しますが、それでも不十分な場合にはさらなる除菌治療も検討します(3次除菌)。
※保険適用となるのは2次除菌までで、それ以降は自費診療となります
治療中の注意事項
除菌治療中は治療効果を高めて副作用を減らすために、以下の点にご注意ください。
- 処方された薬は指示通りに服用しましょう(中断すると治療効果に影響します)
- 治療期間中はアルコールや刺激物の摂取、喫煙を控えてください
- 薬のアレルギーや持病がある方は、事前に医師にお伝えください など
除菌後の判定とフォローアップ
ピロリ菌を除菌しても、それまでに胃粘膜が受けたダメージはもとに戻りません。そのため、除菌成功後も胃がんのリスクは一般の方より高い状態が続きます。除菌完了後も定期的に胃カメラ検査を行い、胃の状態を確認することが大切です。
神戸市東灘区・摂津本山にある賀来医院では、経験豊富な消化器内視鏡専門医による検査でピロリ菌感染の有無を的確に鑑別します。お腹の不調が続いている場合は、放置せずに早めにご相談ください。